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憧憬 Yearning for accordion (2018/2020)
この作品は、2017年に国立音楽大学で行われた、大田智美さんのワークショップの受講をきっかけに制作し、その翌年1月に初演していただきました。
今回演奏していただいたのは、今年(2020年)に入って制作した改訂版で、その過程で大田さんには(リモートで試奏していただきながら)作品に関してアドバイスをいただきました。結果、よりアコーディオンらしい表現も多分に加えられ、作品がブラッシュアップされたと思います。
素朴なようで、光沢のある豊かなアコーディオンの音色に魅せられ、自ずと「うた」が基調となる作品に仕上がりました。
A Plank in Reason for Orchestra (2019)
「理性の板」を意味する、この作品のタイトルは、19世紀のアメリカを代表する詩人、エミリ・ディキンスン(Emily Dickinson 1830-1886)の一篇『I felt a Funeral, in my Brain(私は頭の中に葬式を感じた)』 の中の一節より引用したもの。「理性の死」を描写したこの詩は、作曲をするにあたってのインスピレーションの源泉となった。
この作品は3つのセクションとコーダ部分に分かれており、3つのセクションにはそれぞれ音楽を先導する独奏楽器が存在している。第一セクションでは、コントラバスーン、バスクラリネットの2本の楽器が順に登場し、その役目を担う。続く第二セクションでは、性格の異なる2本のトランペットが同時に進行し、それらに呼応するものとして、グルーピングされた2つの楽器群が存在する。第三セクションでは、「地下水脈」としての、トロンボーンの倍音列奏法による持続音を背景に、2つのヴィブラフォンを主体としたコラール 風の和音連結が行われる。これは内省的な、私自身のコラール(my own choral)である。次第に和音の要素はオーケストラ全体へと派生し、強力なダイナミクスを伴うクラスターの音響へと昇華する。突如の静寂の後、コーダへと続くが、この部分は第一セクションの回想的性格を持つ。
私は4年間の大学生活のうちに様々な楽器のための独奏曲を書いてきたが、その中で吸収し得た知識を、協奏交響曲的性格のこの作品において生かすことが出来たのではと思う。
うつろう花 Passage of Flowers for Piano quintet (2017)
一輪の花が持つ、可憐さや儚さ、…幾多の表情を一曲のなかに描けたらの思い、作曲しました。どうぞお楽しみください。
Vocalise for Soprano and Harp (2017/2019)
この作品は、2年前に書かれたソプラノとピアノのための同名曲をソプラノとハープのために改訂したものです。この作品に見られる、シンプルな「メロディー」に向き合う作業は私の創作活動において欠かせないものであり、私個人にとっての、「歌うこと」への歓びを素直に表したものでもあります。
「ヴォカリーズ(Vocalise)」という、歌詞を伴わない歌が聴く人、一人ひとりに様々なイメージを喚起させることが出来るのなら…これほど嬉しいことはありません。
De Nachtwacht for three percussionists (with five snare drums) (2017)
バロック期を代表する画家レンブラント(Rembrandt Harmenszoon van Rijn 1606-1669)の代表作『夜警(De Nachtwacht)』からインスピレーションを得て作曲された。
レンブラントの絵画の特徴といえる、明暗の境においての「淡い」色使いのような、奥行きのある音世界をスネアのアンサンブルにより構築しようとする試みである。
Airly-fairly Impromptu for Yunluo (2020)
中国の伝統楽器・雲羅(ウンラ)のために書かれた小品「Airly-fairly Impromptu for Yunluo」では、アコースティック・ギター(レギュラーチューニング)の5フレット、7フレット、12フレットで鳴らしうるナチュラルハーモニクスの音を雲羅で奏でています。
それは、雲羅という楽器にアコースティック・ギターのナチュラルハーモニクスに似た金属質の豊かな響きを感じたからでもあり、また、幼い頃から親しんでいるアコースティック・ギターの"感触"を敢えて別の楽器で復元してみたらどうだろう?という興味があったからです。
タイトルの「Airly-fairly」には"軽やかな、優雅な"という他に、"空想的な、雲をつかむような"という意味があり、私の今作品のテーマを多義的に表しています。
Legendary Butterflies for Bass clarinet solo (2018/2019)
「揺らめく旋律は、 ためらいつつも未だ見ぬ遠くへの飛翔を志向する。」 というのがこの曲における作曲上のテーマであった。「繊細さ」と「神秘性」とが共存した、この曲の楽想を端的に表すものとして、 『伝説の蝶(Legendary Butterflies)』と名付けた。 (特定の種の蝶を指すものではない。)
音域によって様々に表情を変化させる バスクラリネットの楽器の特性は、 曲の経過とともに色濃く現れはじめる。
りゅうちぇろ Ryu-Cello (2017)
Tokyo Media Interaction主催「ACOUSTICLUB Vol.2」(2017年)にて発表された作品。
布にくるんだチェロと、顔を布にくるまれたリコーダー奏者の響き合いをテーマとする「舞台作品」として書かれた。なお、この作品にはおおまかな構成を示した「指示書」があるだけで、楽譜はない。(奏者のその場の感覚的な部分に大きく依っている)